『野々山には関係ないだろ』

 と藤城に言われた。

 関係ないだろ?は、別にいい。

 それよりも、え?野々山って誰のこと? あたしの名前は、野々宮夏帆。

 そう思ったけど、この場には乃愛と藤城とあたししかいない。

 ということは……、野々山ってあたしのことだ。

 藤城に好きになってもらえるとは、さすがに思っていないけど、あたしって、名前も憶えてもらえないレベルなんだ。

 そう思ったら悲しくなった。

 もちろん、藤城のことはあきらめたつもりだけど、乃愛のことはもちろん応援してるけど。

 でも、好きだった人に名前を間違われるのは、けっこうツラい。