あのときのテレビで聞いた、藤城王河の言葉が蘇った。

『俺、カッコいいのが仕事なんで』

 その次に、確か彼はこう言っていた。

『やると決めたことは、やりとげますよ。俺、負けるつもりはありませんから。自分自身だけには、ね』

 あのときは、ただ、生意気なヤツって思った。

 嫌いって思った。

 でもよくよく考えてみれば、あたしがあのときそう思ったのは、もしかしたら、あたしにできないことを、藤城王河はやっていたからなのかもしれない。

 そう、あたしにはできないこと。

 ――“自分に正直に生きる”ってこと。

 そう思った瞬間、あの日自分の部屋で感じた、悲しいような苦しいような、胸のドキドキの正体がわかった。

 あたしは自分に正直に生きられない自分が悲しくて、それを目の前に突きつけられたのが苦しくて、と同時に、それをあたしに教えた藤城王河に恋をしたから、ドキドキしたんだ。