でも、たった1回じゃ、ヤツの尻尾をつかむことはできないかも。

 そう思い直し、また撮影のスケジュールを入手して、出かけてみることにした。

 その日は、どうやら雨の日のシーンの撮影のようだった。

 あたしは撮影のことが全くわからないのだけど、こんなに雨っていうか水を降らせて、機材とかは大丈夫なのかな?と心配になってしまう。

 そんなひどい雨の中、藤城王河は嫌な顔ひとつせず、今日も真剣に演技をしていた。

 もちろん、全身ずぶ濡れ状態。

 その姿を見た瞬間、なんかわからないけど、涙が溢れた。

『俺、カッコいいのが仕事なんで』

 あの言葉は、カッコつけのチャラチャラした言葉なんかじゃなくて、藤城王河の本心なんだ。

 それが、ハッキリとわかったから。