必死になればこのご時世、そういう情報もなんとかなるもので、あたしは、本物のヤツを見ることに成功した。
といってもかなり遠巻きにだけど、それでも動く本物の藤城王河。
でも……、撮影って、思ったよりもハードなんだね。
このクソ暑い炎天下の中、嫌な顔ひとつせずに演技をするのは、けっこう大変なことだと思う。
それに、噂を聞きつけて見に来たファンに、撮影の合間や休憩時間などに、嫌な顔ひとつせず笑顔で接するのもすごいと思う。
「王河さぁ、いっつも神対応なんだよね~」
「うん、ほんとそう。カッコよすぎて、うれしすぎる~」
と、近くにいた女子たちが幸せそうにしゃべっている。
そんな女子たちを横目に、その日、あたしはかなり長い時間粘ってみた。
でもとうとう、藤城王河の悪いところを見つけることができなかった。