「それに、知ってた?星城学園に通っていた藤城くんが、南ヶ丘高校を受験したわけ。何不自由ない学校生活を送ってたのにね」

 あー、それはあたしも不思議だった。

「それも乃愛ちゃんのためだって」

「え?まさか」

 驚きで、今度は目を見開いた。

「っていうか、藤城くんのため?乃愛ちゃんにカッコいいって言ってほしいがために始めたモデルの仕事だったけど、忙しくなりすぎて、乃愛ちゃんと会える時間が減っちゃったっていうのが原因なんだって」

 山田くんは窓枠によりかかったまま、遠くを見つめた。

「乃愛ちゃんと少しでも長く一緒にいたいから。少しでも学校行事に参加して、高校時代の思い出を作りたいから。ほら、学校が違うと、そういうの、共有したりできないじゃん。それを共有したくて、乃愛ちゃんと同じ南ヶ丘高校を受験したんだって。

聞いたところによると、藤城ん家って、親も親戚もみんな星城学園の出身らしいから、藤城の判断にみんな驚いたらしいけど、もともと医者の家系なのにモデルとか俳優の仕事を始めていたし、末っ子だからまぁいいか、みたいに大目に見られたらしいよ」