そんなあたしを、足を投げ出し両手を横についた状態で、山田くんはぼそっと言った。

「んー、それに、俺は乃愛ちゃんのファンとも違うから、ファンにもならない。それでも、廊下ですれ違ったら挨拶したり、くだらない話をしたりするそういうラフな関係。

他人ほど遠くないけど、仲のいい知り合いって感じ。よくない?そういうの。俺は乃愛ちゃんを好きだった自分に満足できたから、きちんと想いを伝えられたから、だから後悔はしていない」

 山田くんもすごく優しい。

 友達じゃなくても、しゃべる機会をあたしに与えてくれる。

「乃愛ちゃん、ありがとね。俺にときめきをくれて。恋をするあったかい気持ちとか、逆に切ない悲しい気持ちとか。全部、乃愛ちゃんがくれたもの。

俺、忘れないよ。本当に大好きだったよ、乃愛ちゃん。藤城くんと幸せになって」

「あたしこそ。そんなに好きになってくれてありがとう。そして、ごめんなさい」