「はい。フレンチトーストを作ろうと思うのですが、お好きですか?」
「好きだよ~。甘い物には目がなくてね~。楽しみにしているよ~」
と、乃愛のお父さんがにこにこ楽しそうに笑ったとき、リビングのドアが開いて乃愛のお兄さんが顔をのぞかせた。
「あれー、王河。おはよー」
「あ、琉聖さん、おはようございます」
「すごいなー王河は。朝から、顔バッチリじゃん。俺なんかぁ……むくんじゃって……むくんじゃって」
大きな口を開けてあくびをしながら、琉聖さんはのんびり言った。
乃愛はどちらかといえばお母さん似で、琉聖さんはお父さん似。
だから琉聖さんは、切れ長の大きな目が特徴のすっきりとしたイケメン。
頭もいいし、スポーツもできるし、おまけに優しいから、ものすごーくモテるらしい。
しかも、妹を溺愛してるのも、なぜかポイントが高いらしい。
ウチの2番目の兄貴の瑠河と同い年だから、ふたりはかなり仲がよくて、そこからいろいろと情報が入ってくる。
そういえば、どうして俺が兄貴のことを呼び捨てにするのかっていうと、どうやら俺が初めて話した言葉が、パパでもママでもなく、”こーが“だったかららしい。