「熱中症になるなよ」


一喜さんは飲み物を私に渡すと、隣のベンチに座った。


「ありがとうございます」


私は手にしたジュースを眺めながらお礼を言うと、一喜さんは満足気に笑った。


「入らねぇんだな、楽しみにしてたからてっきり泳ぐの好きだと思ってたわ」

「多分私泳げないと思います」

「何で多分なんだよ」


私は弄ぶように砂浜に足で丸を描く。


「水の中は、思っていた以上に静かで、それは心地好かったんですけど、それに息苦しさを感じるとなんかもう駄目みたいで…
水の中はまるで家の中にいるみたいで、気付いたら学校のプールで溺れてました」


中学の頃、夏になると水泳の授業があった。

プールや海で遊んだことの無い私は、それなりに楽しみにしていた。