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「永田さん、貧血が酷いですね。身体がだるかったりしませんか? あと、体重が前回より物凄く減ってるけど……ちゃんとご飯食べられてます?」

「えっと……しんどいのはずっとなのでだるさはよく分からないんです。食事もすみません。つわりが酷かったので実は(あんま)り」

 担当医の伊藤(いとう)昭二(しょうじ)に問われて、美千花(みちか)はオロオロと視線を揺らせる。

 美千花の血液検査の結果を眺めながら、眉根を寄せる伊藤医師を見ていると、お腹の中の赤ちゃんは大丈夫だろうかと不安になる。

「十三週と五日か。つわりはまだしんどい?」

 カルテから視線を上げて美千花を見つめてくる伊藤に、フルフルと首を横に振る。

「ピークは過ぎたと思います。大分楽になってきたので」

「それは良かった。じゃあこれからは少しずつでもいいから栄養のあるものを食べるよう心がけて? 血液検査の数値が良くないから鉄剤を処方しておきますね」

 コクっと頷いた美千花に、「便秘とかある?」と伊藤が何でもないことのように付け加える。

 医者なのだからそう言うのはサラリと問うものだと分かっていても、美千花は異性にそんなことを話さなければならない事にちょっぴり羞恥心を覚えて。