しかし藤宮くんは見たこともないような表情をしていた。


「ほんと、そそっかしいな」

「え、」


 いつもの呆れたような表情のようにも見えたけれど、なんとなく少しだけ寂しそうにも見えた。

 私の気のせい?


「俺の気になる女の子が佐藤だったら、佐藤はどう思う?」

「え?」


 それってどういう意味?なんでそんなこと…。


「それって…」

 私が藤宮くんに聞き返そうと口を開きかけた時、後ろから声がした。


「おーい!美音!平気?」

 リレーを終えた椿がこちらに駆け寄ってきた。
 彼は首から下げた金のメダルを自慢げにこちらに見せてくれた。


「リレー!一位取ったよ!」

 陽の光を受けて、メダルがきらりと光った。


「おめでとう!お疲れ様」

「うん!ありがと!ところで怪我、大丈夫だったか?」

「あ、うん、今保健室で手当てしてもらって、応援席に戻るとこ」


 よかった、とほっとした表情を見せながらも、椿は私の後ろの藤宮くんを怪訝そうに見やる。


「で、なんで藤宮が一緒にいんだよ」

「あ、」


 保健室までお米のごとく担いで連れて行ってもらったなんて、恥ずかしくて絶対に言えない。