「え…?」


 簡単な文字列なのに、何故か私の頭はうまく動かなくて、その言葉がなにを意味する言葉なのか、一瞬分からなかった。


「気になる、女の子…?」


 ひゅうっと心地よい風が私達の間を通り過ぎる。

 気になる女の子?藤宮くんの気になる、女の子…?


「え!?」


 その言葉の意味を理解した脳は、またもパニックに陥る。

 え?どういうこと?藤宮くんの借り物競争の指示が『気になる女の子』、私を連れて係りの子にこの紙、見せてたよね??
 私が、藤宮くんの気になる女の子、ってこと?


「あ、わわ、あ、あの」


 何を言っていいか分からず混乱していると、藤宮くんがふっと笑った。


「慌てすぎだろ」


 彼はいつも通りで何一つ慌てる様子もなく、ましてや特に何も取り繕うような態度すら見せなかった。
 どうしてそんなに平然としているのだろうか。
 彼は軽くため息をついて、こう続けた。


「こんな紙の指示、誰を連れて行ったってどうせわからないだろ」


 そう言われて、はっとなった。

 そうじゃん、係りの人が藤宮くんの気になる人なんて分かるわけないじゃん。
 …誰でも、よかったんじゃん…。


 急に冷静になった私は、恐る恐る彼の表情を窺う。背中に冷や汗がつたったような気がする。

 一人で勘違いして、慌てて恥ずかしい!顔から火が出そうとはまさにこのことだよ!


「佐藤って、…」


 あー、これは盛大にからかわれる!そう覚悟した。