「治療もだけど、その、保健室まで連れてきてくれてありがとう!本当は足首が結構痛くて、なかなか歩けなかったんだ。だからえっと、すごく助かりました!」

 思い返すとやっぱりすごく恥ずかしかったけれど、とても助かったのは事実だ。ストレートに感謝の気持ちを伝えると、彼は振り返り一瞬驚いたような表情を見せた。しかしそれも一瞬で。


「あー死ぬほど重かった」


 そう言いながら大袈裟に肩を回す。


「運動部なんだからもっと運動しろ」

「なっ!そ、そんな重くないでしょ!」

 いや、重かったかな…。


 私はまた恥ずかしさで顔が火照っている気がして、頬に手を当てる。


 素直にお礼を言うといつもこうなんだから。

 あれ、そういえば以前もこんなことあったよね?
 傘を忘れて困っていた時、お祭りではぐれてしまった時、包丁で指を切ってしまった時…。今日だって。いつも私を気遣ってくれていた。言葉も態度も分かりにくいけど、からかわれる時だってあるけど、結局いつも助けてくれてたよね。


 なんだかまた少し、息苦しい感じがした。どくんと脈打つのを感じる。


「…いつもありがとう」


 自然と呟いた言葉は、届いたのか、届かなかったのか。


「用が済んだなら行くぞ」


「あ、うん!」


 私もゆっくりと立ち上がると、彼と一緒に保健室を出た。