「そこ、座れるか?」

「え?あ、うん」


 言われた通りに手近な丸椅子を引き寄せ、それに腰を降ろす。


「足、見せてみろ」

「え!?」


 戸惑っている間にも、藤宮くんに足を持ち上げられた。


「ひゃあっ!じ、自分でできるよ!」

「うるさい、少し静かにしてろ」

「うっ」


 藤宮くんは私が擦りむいた傷口の砂を綺麗に拭き取って、消毒してくれた。綺麗になった傷口にガーゼが貼られる。緊張で強張っていた身体が少しずつ和らいでいく。


 て、手際がいい…!

 びっくりして眺めている間に、右の足首にもテーピングが巻かれていた。


「あ、ありがとう!藤宮くん、手際いいね!びっくりしちゃった」

 眺めている間に、治療は終わっていた。


「ああ、保健委員だから」


 保健委員?そうだったんだ。保健委員は先生の補佐となり、一通り怪我くらいの治療なら習うと聞いたことがある。だから文化祭の時にも委員会の仕事があったんだ。どんな行事でも何があるかわからないもんね。

 ちらっと彼を見ると、使った薬品や備品をもとの場所に片付けていた。

 何故だか自然と笑顔が零れてしまう。彼の背中に声を掛ける。