「ほら、着いたぞ」

「あ!ありがとう!!」


 その声と同時に私は勢いよく飛び降りる。着地の瞬間ものすごく足が痛かったけれど、それどころではなかった。恥ずかしすぎて、彼の顔がまともに見られない。


 とにかく保健の先生に早く診てもらおうと、保健室内を見回す。しかし先生の姿は見えなかった。


 困ったな…けど早くテーピングでもして応援席に戻りたい。藤宮くんとこのまま二人きりはなんだか恥ずかしい。

 室内のものを勝手に使うのはよくないと分かってはいるけれど、私はいち早く心を落ち着かせたかったので、治療できそうなものを探すことに集中した。


 それでもやっぱり抱えて連れてきてくれたことをどうしても考えてしまう。


 どうしてそこまでしてくれたんだろう?

 「怪我?はぁ、相変わらずどんくさいな」くらい平気で言われるかと思ったのだけど、むしろ心配してくれていた。こういう時少女漫画だったら、お姫様抱っこで連れてきてくれるんだろうけど。そこはやっぱり藤宮くんらしいよね。どっちにしても恥ずかしかったけど!


「何探してるんだ?」

「えっあっ、湿布とか絆創膏とか!?」


 急に声を掛けられて、あからさまに素っ頓狂な声を出してしまった。


「それなら、そこ」

「え?」


 彼は窓際の棚を指差した。そこには包帯と絆創膏が並んでいるのが見えた。


「あ、本当だ」

 私はゆっくりと取りに行こうと歩き出すが、彼が私よりも先に棚を開け、包帯やガーゼ、テーピングなどを取り出してくれた。