グラウンド中央ではクラス別対抗リレーの真っ只中。

 椿もう走っちゃったかな、そろそろかな?と、ぼーっとグラウンドを見ていると、辺りが一層暗くなった。


 その影は人影で、こんなに近付いているのに、痛みでぼーっとしているせいか全く気が付けなかった。不意にその人影が私の顔を覗き込んできた。


「お前、こんなところで何やってんの?」

「わっ!えっ!藤宮くん!?び、びっくりした…」

「さっきど派手に転んでただろ、保健室は?行ったのか?」

「あ、いや、これから行くところで…」


 そう返事をしながら慌てて立ち上がると、右の足首に激痛が走る。痛みでつい顔を歪めてしまう。


「そんなに痛むのか?」

 その様子を見た藤宮くんが珍しく心配そうな声で聞いてきた気がする。


「だ、大丈夫だよ!」

 心配かけないようにと、心配してくれているか分からないけれど、とにかく自然に歩こうとゆっくりと足を踏み出す。


 すると、「おい、」と呼び止められた。


「え?」