「平気!一位取れたよ!」

 うまく笑えていなかったのだろうか、椿は余計心配そうな顔になってしまった。


「うん、おめでとう。でもあんまり無理すんなよな、ほら保健室行こ」

 私は差し伸べられた手を掴もうと手を伸ばしかけた、けれどはたと気付く。


「ありがとう、椿。でも次リレーでしょ?椿はそっち行かなきゃ!保健室くらい一人で行けるよ」

「いや、でも…」


 椿は尚も迷っているようだ。少しでも彼を安心させたくて、私は明るく続ける。


「私なら大丈夫だよ!リレー頑張って!応援してるから!」

 そう言うと椿は渋々頷く。


「分かった。リレー一位取ってくる!保健室で絶対見てもらえよ、リレー終わったら保健室寄るから!それまでゆっくりしてて」

「うん!」


 名残惜しそうに後ろを振り返りながら、椿は入場門へと向かった。


 彼の姿が見えなくなるまで笑顔で手を振っていたけれど、正直足の痛みはなかなかのもので、平静を装うのがきつくなってきた。保健室まではさほど遠くはないはずだけど、これはちょっと歩くのが大変かもしれない…。


 右足を引きずりながら、一歩一歩慎重に踏み出していく。どうやらやはり足首を捻ってしまったらしく、膝よりも足首が痛い。
 普通に歩いていればもう着くはずなのにまだまだ距離がある。ものすごく遠く感じる。少し休もうかな、そう思い近くの木陰に腰を下ろす。風が涼しくて、とても心地よかった。