「位置について、よーい…」

 パンッ!!

 スターターピストルの乾いた音がグラウンド中に響く。

 私のレーンは見た感じ運動部の子はいなさそうだった。うまくいけば一位を取れるかもしれない。
 焦らず、油断せず、一つ一つの競技を丁寧にこなしていく。跳び箱、平均台、縄跳び、…とここまでは順調に進み、暫定一位。


 よし!残すところはこの網を潜ってゴールに向かって走るだけ。


 焦らずここまで来たつもりだったけれど、最後の最後、網を出る時に右足の靴ひもが解けたことに気が付かなかった。丁度網を出て走り出そうとしたところで、その解けた靴ひもを思いっきり踏んづけてしまう。


「うわっ!」


 バランスを崩した私はもちろんおもいっきり転んだ。


「いったーっ…」


 あまりの痛さに涙目になったのも一瞬、はっと我に返り、そうだ競技中だった!と慌てて立ち上がる。幸いまだ抜かされてはいなかったけれど、みるみるうちに後ろとの距離が縮まっていた。

 私は痛みを堪え、あと少しのゴールまで全速力で走った。



 障害物競争、結果は見事一位。


 よ、よかった…とほっと息をつく。頑張ってよかった。そう安心した途端、足に激痛が走った。


「いっ!痛い…」


 膝は擦りむいており、少し血が出ている。それよりもなんだか右足首の方がズキズキと痛むような気がする。捻ってしまったのだろうか。


「美音っ!大丈夫!?」

 椿が心配そうに駆け寄ってくる。私は痛みを堪えつつ、精一杯笑った。