「たいしたことじゃない」

 私じゃなきゃいけない内容、ってわけではなかったのかな。


 なんとなく、藤宮くんが私を選んでくれたことに嬉しさを感じていたのだけど、別に誰でもよかったのか。なぁんだ残念…。

 残念?何が残念?藤宮くんにとっては、隣の席だしこいつでいいか、くらいの指示だったのかもしれない。それの何にがっかりしたのだろうか?

 ていうかたいしたことじゃないなら、教えてくれてもいいんじゃない?って、もういないし…。


 そうこう考えているうちに、またも彼はいなくなっていた。


 私はちょっとだけもやっとした気持ちのまま、応援席に戻ることにする。


 彼に握られていた手首が、まだ少し熱い気がした。