「うそっ…。セイくんって、声楽教室で一緒だったあの皆川くんなの？」

「あぁ、俺だよ。だいぶ前に『いっせいのせい』って言ったのに全然気付かないから」


「あっ、確かあの時そう言ってたね。いっせーのせっじゃなくて、一星のセイだったんだね。声変わりしていたから、皆川くん本人だって気付かなかったよ」

「今日まで内緒にしててごめん。俺は紗南が過去の話をした時に気付いたよ。俺との思い出をずっと大事にしててくれて、ありがとう」



進み行く会話と共に同一人物だと言う実感が湧いていくと、どうしようもないくらい胸が熱くなり、涙は更に勢いを増して止まらなくなった。




ずっと、彼の存在に気付かなかった。

こうやって本人に正体を明かしてもらうまで、近くに居た事に気付かなかった。



でも、私達ようやく会えたね。



涙を拭っていたハンカチは、湿った感触が指に伝わるくらい涙が染み込んだ。


彼に渡すはずだった星型の飴は、ギュッと繋いだ手と手の隙間からすり抜けて、静かに床へと転がり落ちた。