「上履きに星マークがあるんだったら、放課後に芸能科の下駄箱を探しに行ってみる?セイくんのクラスくらい分かるんじゃないかな?」
最近、ふた言目にはセイくんの名を呼ぶようになっている私の気持ちに薄々気づき始めた菜乃花は、不思議と協力的だった。
「でも、芸能科の校舎に侵入したら、ブレザーの色で先生達にバレちゃうよ」
「ここは思い切ってブレザーを脱いで西門側から芸能科に侵入しよう」
「え!セイくんのクラスを知る為に、そこまで危険を冒すの?ダメだよ。それに、もう季節は冬だし、ブレザー無しじゃ寒くて私達風邪を引いちゃうよ」
「私もハルくんの上履き探しに行きたい」
菜乃花がやたら協力的だったのは、どうやら自分の欲深さも関係してるようだ。
菜乃花の作戦通り、私達は放課後に西門から芸能科の校舎に侵入した。
しかし、芸能科は補習授業が行われてるせいか、放課後になっても下駄箱には靴が沢山並んでいる。
目を凝らして頑張って上履きを探しても、セイくんの上履きが見つからないのは、セイくんがまだ校舎にいる証。
彼はいま間違いなく、この校舎の何処かで授業を受けている。
「ねーねー、ハルくんのマークって何?どの上履きだか全然わからないの」
「あのねぇ…。私はセイくんのマークしか知らないよ」
「何で知らないのよ~!」
私と同様、菜乃花もハルくんの上履きが見つからずに、ガッカリと肩を落としている。
普段、芸能科の校舎には入れないから、気軽にセイくんを探しに行けない。
彼はいつも近くにいるのに、芸能科は情報がシャットアウトされてるから、会いたくてもなかなか本人まで辿り着けない。