彼とコミュニケーションを図れば少しは気まずさも解消されるかも…。



そう考えた紗南は、勇気を振り絞ってカーテン越しから話しかけてみる事にした。



「あのぉ、お隣さん。入室記録表と上履きに書いてあるのは、何で★マークなんでしょうか?」

「…」



彼は明らかに起きてるが、突然質問を投げてきた私を警戒してるのか話に応じず。

それでも自分は安心材料が欲しくて彼に再び問いかけた。



「もしもーし?隣のベッドのあなたに話しかけてるんですけど」

「…」


「星さーん。あなたですよー、隣のベッドのあなた。私の隣のあな…」
「あー。もう、うるせーなぁ。せっかく休んでるんだから静かにしてくんねぇ?」



彼は強めの口調で少しかったるそうに答えた。

コミュニケーションが図れたと同時に、聞きたい事が喉から口へと押し出されていく。



「あの、保健の先生が戻ってくるまでの間だけでいいですから、★マークの秘密を教えて下さい」

「…」


「教えてくれたら、これ以上は詮索しませんから」

「………絶対?」



ボソッと呟いた彼。
警戒心が強いタイプなのか、妙に疑い深い。



「はい。絶対」

「約束する?」


「します、します〜。約束は守るタイプです」

「フッ……、なんか返事が軽いな。まぁ、いいか」



軽い溜息が耳に入った瞬間、不思議と距離が少し縮んだように思えた。