美玲は泣いていた。コンクール中のホールから出たロビーはほとんど人気がなかった。

陽菜があんな演奏をした。それも、鐘と一緒に。
鐘があんな風に楽しく弾く姿を、美玲は見たことがなかった。

美玲は考えた。陽菜が入学した時、内心なんて汚くて暗い子なんだろうと思っていた。手入れのされていない肌、ぼさぼさの短い髪、適当な服装。なにより人生を舐めているのかと思うほど不貞腐れた様子の陽菜に、暗いのが好きなんだろうなと思ったし、正直そういう人が許せなかった。