「奈子、焦げてる」
私がぼーっとしていたせいで、炒飯からはそれはそれは香ばしい匂いが。
「ご、ごめんなさい」
私は慌ててフライパンを振り、完成したチャーハンをお皿に盛った。
……ところどころ、焦げて黒くなっている。
「これは私が食べるんで、巧くんとお兄ちゃんは別のを……」
「これくらい大丈夫だって。奈子は気にしすぎ。炒飯は香ばしさも味じゃん?」
巧くんはそう言うと炒飯が盛ってあるお皿を手に取り、テーブルへと運んでくれる。
巧くんの優しいところは出会った頃から今もちっとも変わらない。
他にもサラダとスープ、それから食器を私と巧くんは交互に運んだ。
ていうか、お兄ちゃんもちょっとは手伝ってよ。
最後に冷蔵庫から取り出した烏龍茶を3人分注ぎ、トレーに置く。
あとはこれを運べば終わり。
やっと昼食の時間だ。
烏龍茶を冷蔵庫に戻していると、巧くんは再びキッチンへと向かって歩いてきた。
「あ、巧くん。これが最後なんでもう座ってて下さい」
そう声をかけるが巧くんは引き返そうとはしない。
それどころか、そのままキッチンへと足を踏み入れると置いてあったトレーを持ち上げた。