「それ俺の家の合鍵。クマ嬢の家の方が良かった?」


まだ鍵を眺めていた奈子に真実を告げると、「えっ?」と間抜けな返事が返ってくる。


「合鍵って巧くんの家の……?」

「うん。いらないなら、鍵だけ返品受け付けるけど、どうする?」

「い、いる!……でも、私が貰ってもいいの?」

「奈子だから渡すんだろ」

親友の悟にだって合鍵は渡さない。

これは正真正銘、奈子専用だ。


さっきまでクマ坊達に釘付けだった視線も、今は合鍵が独り占め。


「次、遊びに来るときはこれ使ってもいい?」

「もちろん。そのために渡したんだから、好きなときに使っていいよ。あっ、でも、夜来る時は絶対連絡して、危ないから」


「うん、ありがとう巧くん。ていうか、私貰ってばっかりだね」

やっぱり、そう言うと思った。

「そう?前のはバレンタインのお返しじゃん。それに、俺の方が奈子から色んなもの貰ってるよ。料理にレシピ本に……奈子がくれるものはいつも俺のことを考えてくれてるだろ?」

合鍵なんて、ただ俺が奈子に持っててほしかっただけだし。