「あ、巧くん。それ冷凍庫に入りますか?」
洗面所から出てきた奈子は持っていたハンカチで手を拭きながら、紙袋を指差した。
「どれ?」
「えっと、右が巧くんと一緒に食べようと思って買って来たたい焼きで、その隣がおかずの作り置きです。あ、でもいらなかったら持って帰るんで!」
「なんでだよ、いるよ。ありがと」
紙袋を覗くと片方からは甘い匂いが。
そして、もう片方からは白米が欲しくなるような、美味そうな匂いがした。
おかずが入っていた方の紙袋を持ち、冷凍庫を開ける。
中には氷とアイスが数本。
それから、冷凍パスタに冷凍のカレーうどん。
どれもすぐに食べられるものばかり。
ここへ来て3日。
まだ自炊は始めてない。
そこに奈子が作ってくれたハンバーグやポテトサラダ、ピーマンの肉詰めに筑前煮など様々なおかずが入ったタッパを並べた。
「インスタントばかりじゃなくて、ちゃんと栄養バランス考えて下さいね」
「はいはい」
「野菜もですよ?」
「はいはい。……ってか、いっそ奈子が一緒に住んでくれたらいいのに」
冷凍庫のドアをバタンと閉め、後ろを振り向くと奈子が驚いたような顔を見せる。