俺は慌てて近所のスーパーへと買い出しに出掛け、お菓子やお茶、ジュースなどを買いうちへと戻った。
そして、掃除機をかけ終わったとほぼど同時にピンポーンとインターフォンが鳴り、慌てて玄関の方へと走る。
ガチャ、と開き慣れていないドアを開けるとその先に春物のワンピースに見を包む奈子がいた。
肩のあたりで切り揃えられた綺麗な黒髪とワンピースの裾が、風でふわりと揺れる。
その風にのって届くシャンプーの香り。
いつもと変わりはないはずなのに、妙にドキドキしてしまう。
それは、初めてうちに奈子を招待したからだろうか。
「いらっしゃい。道迷わなかった?」
「はい。お兄ちゃんから駅のすぐそばだって言われてたんで。近所にお店もたくさんあっていい場所ですね」
引っ越し当日、悟と元同級生だった友達数人がここへの荷物運びを手伝ってくれた。
そのため、悟はもううちの場所を知っている。
「まぁ、便利っちゃ便利。あ、あがって」
「お邪魔します」
奈子はそのまま手を洗いに洗面所へ、俺は奈子から渡されたいくつかの紙袋をテーブルの上へと置いた。