またふわりと香るシャンプーの匂い。

巧くんの前髪が触れて、少しくすぐったいな。

なんて思ったとき、温かなものが唇に触れる。

巧くんの形の良い薄い唇はほんの一瞬、だけど確かに私の唇に重なった。

目を開けると巧くんの頬は赤く色づいていて、思わず手を伸ばす。

「巧くん顔赤いですよ」

「奈子のが赤いから」

それは……なんとなく自覚している。


「えっ?」なんてわざとらしい反応を返すと、再びキスを落とされた。


チュ、と甘いリップ音が部屋に響く。


「ほら、真っ赤」

「ふ、不意打ちはずるいです」


まるでいたずらが成功した子供のように笑う巧くん。


その笑顔に私もつられて笑顔になった。


「ラーメン食わなくて良かった」

2度目のキスを終えたあと、巧くんがポツリと言う。


「ですね。あれっ?そういえばお兄ちゃん静かですね……」


「もしかして待ちくたびれて寝てるとか?」

「ありえます。起きてたら絶対、遅いって乗り込んできますもん」

お兄ちゃんが大人しく待ってるなんてありえない。

一度寝たら起きないお兄ちゃんのことだ、きっと朝までぐっすり眠り続けるのだろう。