3月14日。
その日付を聞けば、やはり多くの人がホワイトデーを思い浮かべるのだろうか?
それは先輩……じゃなくて巧くんも例外ではないようで。
なんとその日、巧くんからデートに誘われた。
それは卒業式から3日後のこと。
いつもと変わらずお兄ちゃんとゲー厶をしていた巧くんは、私がキッチンで昼食の準備をしていると「手伝うよ」と隣に並んだ。
私が炒飯の具材を刻む横で卵をかき混ぜる巧くん。
お付き合いが始まったからといって、私達の関係に大きな変化はない。
今日だって巧くんは私といるよりも、お兄ちゃんとゲー厶をしている時間の方が長い。
だけど、それでも巧くんと笑い合える日常が存在するだけで私は幸せだった。
「巧くん、そこのフライパン取ってもらってもいいですか?」
巧くんの向こう側に置いてあったフライパンを指差すも、返事はなく、フライパンも取ってはくれない。
仕方なく包丁を置き、フライパンを取りに行こうとしたら「ホワイトデーの日って空いてる?」そう投げかけられた。
「あ、ごめん。あとフライパン」
続けてフライパンが手渡される。
どうやら私の声はちゃんと耳に届いていたらしい。