「考えてるに決まってんじゃん。ずっと好きだった子が彼女になって、こんな近くにいるんだから」
その言葉とともに頬を優しく包み込む骨ばった手。
逸した顔は巧くんの手により、正面へと戻された。
そして、巧くんがゆっくりと近づいてきて、私はそっと目を閉じる。
ギシッと音を立てるスプリング、それから鼻をかすめる同じシャンプーの匂い。
巧くんの柔らかな感触は一瞬、おでこに触れたあとそっと離れていった。
遠ざかるシャンプーの香りに思わず目を開ける。
すると、巧くんは私が寝ている隣に、腰を下ろしていた。
ん…………?今ので終わり?
巧くんの顔が近づいてきて、目を閉じて、おでこにキス。
私はてっきり、その柔らかなものは唇に触れると思ったんだけど。
どうやら、私の早とちりだったようだ。
健全な十代男子が彼女の部屋で、おでこにキス止まり。
それって単純に私に魅力がないんじゃ……。
こういう時、元カノの存在を知っていると嫌でも頭の中に浮かんでしまう。
そして、勝手に比べて落ち込んでしまう。
私には足りないものがあるんじゃないかって。