「そりゃあな。身内のラブシーンなんか見てらんねぇよ」

「私だって無理」

「まぁ、大概そんなもんだろ」

「だね」

特に中身のない会話をしていると、廊下の方から足音がして、お風呂上がりの巧くんが現れた。


「悟、風呂空いたー」

「おー」

お兄ちゃんは持っていたリモコンをテーブルの上に置くと、あくびをしながら立ち上がる。


空いたばかりの隣のスペースに今度は巧くんが腰を下ろした。

隣からは私と同じジャンプーの香りがして、不思議な気分になる。


「……なに、ニヤニヤして」

「に、ニヤニヤしてましたか?私」

「してた」

この頃、巧くんといると顔が緩みっぱなしだ。

つい最近まで保っていたポーカーフェイスは一体どこへ行ってしまったのやら。



「もしかして、同じジャンプーの匂いがするから?」

ニヤニヤとしていた原因をピンポイントで当てられ、思わず肩がビクンっと跳ねる。

隣にいる巧くんは「正解?」そう自信あり気に尋ねてきた。


「どっ、どうしてわかったんですか?」

む、無意識のうちに嗅いでたとか……!?