「ふふっ」

帰り道、左手薬指に光る指輪を見て自然と笑みがこぼれる。

「指輪見て笑うの何回目?」


巧くんはもういいだろ。そんな風に笑うけど……。

「だって何回見ても不思議で嬉しくて。そういう巧くんもニヤついてますよ」

巧くんの広角だって上がりっぱなしだ。



「……うわ無意識だった。俺もペアリング買うなんて初めてだから」


……初めて。加恋先輩とはしてなかったんだ。


そういえば私の知る限り、巧くんの指に指輪がはまっていたこは一度もない。


その事実にまた少しだけ嬉しくなる。




「帰ったらお兄ちゃんに自慢しないと!」


「お、いいじゃん。それなら俺も寄ってこうかな奈子ん家」

「じゃあ、もう少し一緒にいられますね」


「その返し可愛すぎない?」

「……お、思ったことを言っただけです」

「だから、それが可愛いんだって」


私達の関係は変わり続ける。


それはこの先もずっと。



ただ、どんな時だって隣に巧くんがいればそれだけで幸せなんだと思えた。



(恋人の印) fin.