「だから、牽制の意味も含んでて。てか、本音を言うとそっちがメイン。やっぱ突然ペアリングとか重い?」
「そんなことは、」
「奈子がちゃんと俺のものってわかるように印つけてよ?」
巧くんはそう言うと私の左手を取り、薬指を親指で優しくなぞった。
その行動に胸がギュッと苦しくなる。
「私のこと心配性って言ってましたけど、巧くんの方がよっぽど心配性ですね」
「いいや、奈子は自分がどれだけ可愛いか知らないんだよ」
「も、もうやめてください。ほ、ほら、ペアリング見ましょう」
これ以上、巧くんの言葉を聞いてると顔が茹でだこになりそうだ。
「いいの?」
「はい。その代わり巧くんもちゃんと彼女いるアピールして下さいね」
「当たり前じゃん」
さっきとは違い、今度は私が先頭に立ちそのままお店へと足を踏み入れる。
初めてのペアリング選びはすごく緊張して、店員とお姉さんの言葉に戸惑うばかりだった。
結局、ペアリングはお金を半分ずつ出し合うことにして(そこはどうしても譲れなかった)、ホワイトデーには大学で使えるハンカチを選んでもらった。