「……奈子の意見を聞かなかったのは俺が悪かった。でも、奈子が嫌じゃなかったらプレゼントしたいんだけど」
「ペアリングじゃないとだめなんですか?……あ、巧くんとのペアリングが嫌っていうわけじゃなくて」
「ペアリングが一番わかりやすいかなと思って」
「わかりやすい……?」
「4月になったら大学も別々で新しい人達と出会うだろ。その時、指輪があったら一つの印になっていいかなと思ったんだけど」
「い、言われてみれば」
高校であれだけ人気があった巧くんのことだ。
きっと、大学でも爆モテするに決まっている。
ペアリングを着けていれば、私には恋人がいますという印にもなるんだ。
そこまで考えていなかった。
「……買いましょう!ペアリング」
私はともかく、巧くんには絶対必要なもの。
「あ、言っとくけど心配なのは奈子の方だからな」
「わ、私?」
バレンタインにチョコが山積みになるほどモテる巧くんじゃなくて?
「最近また笑顔が増えて嬉しいけどちょっと複雑なんだよ。奈子の魅力にみんなが気づきそうで」
「な、何言ってるんですか」
ここは道端。
さっきのエレベーターとは違い、ひと目のある中でそう言うことを言われると一気に恥ずかしさが増す。