「あ、」


私が高1、巧くんが高2のバレンタイン。

正確に言うとバレンタイン翌日。

巧くんが事故に遭う前、私は手作りのチョコを渡した。

巧くんはそのチョコを元カノの加恋(かれん)先輩からだと勘違いしていて、最近私からだったと気づいたらしい。

でも、巧くんは大怪我を負い、入院中だったこともありそのチョコを口にはしていない。

それにもう2年も前のことだし、そのチョコに対するお返しなんて概念は存在しなかった。

「お返しなんていいですよ」

「いや、だめだろ」

「だ、だとしても!私が渡したのは手作りでお金もそんなにかかってません。さっきの金額見ましたか?お返しってレベルじゃないですよ」

3倍返し、いや10倍返しどころの話ではない。


「……お返しだけでこの店選んだんじゃねぇよ」


「え?」


「もう少しで付き合って1ヶ月だろ。プレゼントにいいかなと思って」


「付き合って1ヶ月でペアリングって買うものなんですか?」


「人それぞれじゃない?」

そ、それはそうか。


「じゃあ、ペアリングじゃなくても」

1ヶ月記念を祝うなら別に他のものでもいいはずだ。

それに、私達の記念日なのに巧くんだけがお金を出すのはおかしい。