たまたま目に入ったのはシンプルなネックレス。

だけど、一昨日私が買ったネックレスとは金額が桁違いだ。


「奈子はどれがいいと思う?」


そう言って巧くんがショーケースを指差すから、私は隣に並びそっとその中を覗いた。

私の目に映るのは2つセットに並べられている指輪。


一般的にいうペアリングというやつだ。

一度も縁がなかった私でも、さすがに見ればわかる。

「……誰が着けるんですか?」

「誰って、奈子と俺?」


………………はい?

他のお客さんと話していた店員さんがこちらに向かってくるのに気づき、私は慌てて巧くんの手を取りお店を出た。


「ど、どういうつもりですか?」

私はてっきり巧くんが欲しいものを買うんだと思っていた。

まさかペアリングを探しにきてただなんて……。


「奈子にバレンタインのお返し渡してないなと思って。それから、女子はサプライズが好きだって聞いたから黙って連れてきたんだけど」


確かに今日はホワイトデーだ。

それに、サプライズも嫌いじゃない。

「私、バレンタイン何もしてませんよ?」


だけど、私は今年巧くんにチョコなんて渡していない。

そもそも作ってすらいないし……。


「もらったじゃん。奈子が1年の時」