2時間近くあった映画はお兄ちゃんの好きな女優が途中からヒロインの姉として登場した。

やたらと勧めてきた理由はこれか。





「悟のおすすめだから期待してなかったけど、案外面白かったな」

「最後の方なんてどうなるのかドキドキしましたね」

「次はどうする?先に昼食べてから移動する?」

「そうしましょうか」

巧くんはどうやら今日、行きたい場所があるらしい。

それがどこかは教えてくれなくて、私は未だに行き先を知らない。

「奈子、この中で食べたいものある?」

巧くんが指差したのはエレベーター横にあった案内板。

「うーん、さっぱりよりこってり……?巧くんは気になるところありますか?」

一度行ってみたかったパスタ店があったけど、巧くんはもっとガッツリ食べたいかもしれない。

そう思って巧くんにも聞いてみる。

「俺は……どこも行ったことないから奈子が行きたいところあるならそこにしよう。例えばパスタとか?」

「……ゔっ……」

どうやら巧くんは私が行きたかったお店をお見通しだったようで、「上だな」そう言ってエレベーターのボタンを押した。