「ご、5分位?前です」
……嘘です、本当は15分前には着いてました。
だって、家にいてもソワソワしちゃうから。
「その反応は嘘だな。ほら、正直に言えって」
「……15分前です」
「まじか。ごめん」
「せ、先輩は悪くないですよ。私が早く来すぎただけで」
「先輩?」
咄嗟に出た“先輩”という言葉を聞き逃さなかった巧くん。
「じゃなくて……巧くん」
「うん。正解」
巧くんはそう言うと私の手を取り、指を絡ませた。
当たり前のように手を繋ぐ関係になったんだな、私達。
今までとは違う距離感がなんだかくすぐったい。
「あ、そろそろ時間ですね」
「ん、じゃあ行くか」
まず最初に向かった先は映画館。
そこで、なぜかお兄ちゃんに勧められた純愛作品を観る。
「奈子、何飲む?」
「えっと、メロンソーダで」
「ポップコーンはあり派?なし派?」
「どっちでも大丈夫です」
こういう会話すら楽しくて、自然と笑顔になる。
私達はジュースとポップコーンを持ち、チケットに記されていた席へと移動した。