数時間後、シャーリィは一人で竜使の間を訪れた。
母と叔母を除く唯一の証人であるミルトに、事実を確かめるためだ。
だがミルトは相変わらず、肝心な部分に話が及ぶと、途端に何の脈絡もなく王妃への賛辞を並べ始め、会話が成立しない。
今までは、それも熱烈な王妃崇拝者だから、仕方の無いことだと思っていた。
だが、真実を知ってしまった今、シャーリィはミルトのそんな言動に、疑問を抱かずにはいられなかった。
母がミルトを竜使女官に召し上げたのは、おそらくは近くに置いて監視するため。
竜使女官は元来、特別な功績のあった一般庶民に与えられることの多い名誉職。
貴族でもないミルトを宮廷に置くには、うってつけの職だ。
だが、同時にリスクもある。竜使女官は宮廷の人間と接する機会も多く、ミルトがうっかり口を滑らせでもしたら、全てが明るみに出てしまう。
あの賢い王妃が、何の手も打たずにいるだろうか……。