バレンタイン当日の世界史の授業は4限。授業が終わったら昼休み。ということは時間がたっぷりある。なんて運がいいのだろう。
私の好意を知っている玲奈についてきてもらうことになっている。




朝からソワソワして仕方がない。もう緊張しているのだ。
気持ちが落ち着かないまま4限を迎える。
今日の先生はなんだか髪の毛がいつもよりちゃんとセットされていた。


ーーーやっぱ、モテるからバレンタイン意識してるのかな。


授業が始まると担任である1年生のクラスから螺旋階段状に積み上げられた大量のポッキーをもらったと嬉しそうに話している。みんなは1人1個持ってくるからいいけどもらった俺は40個のポッキーを手で持って帰らなきゃだから大変だったしおかげで1限に5分遅れたとか言っているけれど嬉しそうじゃん。

やっぱモテる人は大変なのね。



どうしよう。緊張する。やっぱ渡すの無理かな。


イタリアのファシズムについて先生が一生懸命説明するなか、今更ながらビビりはじめる。でも、渡さなかったら後悔するのは自明だ。渡さなくて後悔はしたくないな。悶々としていると授業が終わり、クラスのみんなは社会科室から自分たちの教室へと帰っていく。

いつもなら颯爽と帰る私と玲奈だけれど、今日はみんながいなくなるのを待っている。ひなのが先生と話してるからなかなか先生が1人にならない。

早くしてくれ。

言葉には出さないけれど、私も玲奈も同じことを思っていた。痺れを切らした私たちは一旦廊下に出て隠し持ってきたチョコレートを準備する。
ひなのがやっと出てきたタイミングで再び社会科室に入室した。
いざ入ったはいいけど再び緊張感が高まる。



ああ、やばい。どうしよう。