小学五年生のとき、あの転校生のことで呼び出されたときと同じ。

 あのときは恥ずかしい結果になってしまったとはいえすぐに助けに来てもらえたから大丈夫だった。

 でも今回は……。


 あのときと同じ状況、同じ状態になりそうで怖い。

 足取りは重いけれど、引かれるままに付いて行ったら彼女の目的の場所にはついてしまう。


 あまり生徒が近付かない、非常階段近くの廊下。

 そこには、主に二年と三年の女の先輩達が十人くらいいた。

***

 絶対にマズイ!

 女子とはいえ自分より背の高い人たちに囲まれて、それだけで怖くなる。

 でも、わたしが心配しているのはもっと別のことだった。


「瀬里美沙都さん?」

「は、はい……」

「そんなに怖がらなくても、あたしたちちょっとあなたに忠告したかっただけよ?」

 そうして困り笑顔を浮かべた先輩は、確かにわたしに危害を加えるつもりはないんだって分かる。


 《感情の球》を見ればもっとよく分かるんだろうけれど、今は進んで見ようとは思えなかった。


「山里くん、日宮くん、滝柳くん。校内でも人気の男子たちに気に入られてるみたいね?」

「っ!」

 やっぱり、そのことだよね……。


「中でも日宮くんには嫁とか言われているみたいだけれど?」

「そ、れは……」

 言葉に僅かに乗せられた嫉妬を感じて言葉が続かない。