いじめでは無かったみたいだけれど、なんにしても大ごとにならなくて良かった。

 わたしはホッとして《感情の球》を見るのをやめる。

 でも、その途端声が掛けられた。


「……で? お前はいつまでそこでのぞき見してるわけ?」

「ひぇ!?」

 ビックリしてまた角から顔を出すと、日宮先輩は明らかにわたしを見ている。

 バッチリ目が合ってしまった。

 見てたのバレてたんだ……。


「ご、ごめんなさい。どうしたらいいかわからなくて……」

 謝ったけれど、日宮先輩はどうでも良さそうに「ま、別にいいけど」とわたしから視線を外す。

 それでわたしへの興味もなくなったみたいだったから、「失礼しました」と告げて小走りで階段に向かった。


 そのまま走り去ろうと思っていたのに……。


「ん? おい、ちょっと待て!」

 と、日宮先輩の前を通ったときに腕を掴まれ引き止められてしまう。

「な、何ですか?」

「お前、何のあやかしだ? これほどの霊力……そうそうないぞ?」

「え? えっと……サトリ、ですけど」

 何を言っているのかよくわからなかったけれど、答えないと多分離してくれないと思って正直に答える。


 なのに……。