「君を抱かせて欲しい。」
考えるよりも先に口に出ていた。
優雅だった空気は一瞬にして消えてしまった。
「僕は明日ここを出るんだ。
 だから、まだ見ぬ景色を見せてくれた君を
 抱きたい。
 一生悪い虫が寄らないようじゃ楽しくないだろう。」
返事は聞こえなかったが
そんな事はどうでも良かった。
僕は彼女を押し倒し、
手に張り付く弁柄と乳房の感触を愛おしく思った。
唇を重ね、深紅を共有した。
ここにもまた弁柄の感触を感じていた。
舌を身体に這わせ、
乳首の先端を丁寧に行き来する。
彼女は表情こそ変えなかったが、
少しずつ声を洩らしていった。
滑りの悪い身体をなぞりながら、
唯一弁柄が塗られていない場所にたどり着いた。
弁柄を通してのみの温もりしか感じられなかった彼女の
本当の温かさを感じられる。
少し傾いた太陽が僕達を照らしていた。