「椿季、今日も薬飲む?」

「今日はいい…」

不思議な事に、南都と電話をした日は、睡眠薬を飲まずに眠れていた。

それでも、椿季の心は限界だった。

他人(ひと)が自分の悪口を言っている気がする。
自分を笑っている気がする。

そんな風に感じるようになった。

教室にも入れなくなったが、

「そんなの、気にしすぎだ!」

精神疾患に理解のない担任に、半ば無理やり教室に入れられた。

だから、高校を卒業して何十年が経つが、今でもその先生が嫌いだ。

それとは反対に、

「加古(かこ)、今回のテスト、いつもより点数が低かったけど、何かあったのか…?」

数学の成績が下がった事で、椿季の事を心配してくれた、数学の担当教師、通称・マリオには今でも感謝している。