「あ、加古(かこ)さ~ん!」

椿季が教室に入ると、クラスメイトの岡山 菜々美(おかやま ななみ)が声を掛けてきた。

菜々美は、椿季が高校1年生の春に恋をした、中沢 孝文(なかざわ たかふみ)の彼女。

その、孝文の、椿季の振り方は最低で、椿季は一瞬で孝文を嫌いになった…。

…にも関わらず、だ。
この2人は、未だに椿季は孝文が好きだと思い込み、嫌がらせにも近い、ラブラブアピールをしてくるのだ。

「なに?」

「加古さん、普通科の彼氏がいるんでしょ?
バレンタインはどうするの?」

そう言っている、菜々美の手には、手編みのマフラーがあり、今年のバレンタインはこれかと思いながらも、答える。