色々な花を売るはずの花屋が、毎年真夏は向日葵だらけになる。

娘は、よく友達を連れて食べに来たり、店の手伝いをしてくれる。

初めて彼氏を連れてきた時は、優介は今にも飛びついてかかりそうで、止めるのに必死だった。

私たちは娘が結婚しても、孫が出来ても、2人でこの店を守り続けた。

優介が私の手を引きながら、若い時よりもずっとゆっくりと時間をかけて歩いて、お墓に向日葵を添えた。

久々に、東希の夢を見た。

大好きな優介がいて、彩絵がいて、黒羽がいて、みんなで夏の空の下で、笑っていた。

東希は、これでもかと言うくらい海で水浴びをしていた。


私は、優介を置いて先に天国へ行ってしまうことになる。

彼のシワシワの目から、美しい涙が、私の手を伝う。

「先に東希と再会して、浮気しないでくれよ」

「こんなシワシワのおばあちゃんなんて、東希からしてみたらごめんでしょ。」

「お母さん」

娘は、ボロボロと泣いていた。

こんなにも優しく、美しく育ってくれてありがとう。

貴方は、私たちの花だよ。

私の目元に、彼はまた向日葵の花束を置いた。

「向日葵のような君が、昔も今も、何よりも綺麗だよ。」

それが、私たちの生前最後の会話だった。


その日まで、その日が来ても、私たちは同じ温度の、同じ夏を生きる。


私たちの世界はずっと、真夏であり続ける。





この世界は、真夏でできている。 fin❁⃘*.゚