これがひと夏の、私たちの恋だ。

これからもきっとこの季節に(すが)り続け、秋も、冬も、春も来て、

そしてまた、幾度となく共に夏を過ごす。

私たちはこれから、私たちの物語を綴っていく。


終わりかけの夏を噛み締め、私たちは、人生で初めて、そっとキスをした。


優介が、こんなにも、愛おしい、

彼と過ごすこの時間が。私の胸を、ずっと熱くさせる。


それから十数年、私たちは同じ家に住み、同じ苗字となった。

プロポーズされた日は、やっぱり真夏で、貰った花は、やっぱり向日葵だった。

それから結婚記念日に、彼は毎年向日葵の花束をくれた。

私のお腹に2人の命を授かった時、私を支えて、ひとつのお墓へ向日葵を添えた。

私たちは小さな手を引き、3人でお墓へ向日葵を添えた。

それから20年後、私たちは海の近くに店を立てた。

コーヒーや焼き菓子、それから花の匂いが店内を香り、

時折波の音が店内まで聞こえる。

伊勢から、必死で花の育て方、手入れ、花言葉まで何年もかけて勉強をして、

私は、私たちはようやく夢を叶えた。

優介が学んだ暖かく、優しいコーヒーと、私の花が共存した、花屋兼カフェを建てた。

この場所が、私は何よりも好きだ。

今日は、久々に彩絵と黒羽が遊びに来る日だ。

店に来るなり、彩絵は大きな花束を持って飛びついてきた。

花屋に、花束を渡すなんて、と笑いながら、私はその花束を片手に、彩絵をめいっぱい抱きしめる。

2人は今、世界中を飛び回っていた。