「えっ!?ち、ちょっと、いいの?勝手に入って」

「勝手じゃないよ」

どういう訳かさっぱりだったが、優介の自信ありげな瞳を見て、

私は(いぶか)しげなまま彼の“903”とインターホンを押すボタンを眺めた。

“903”と言うことは、このマンションは確か10階建てだった為、最上階から2番目ということだ。

このマンションは、優介が飛び立ってから完成したマンションであるのに、

いつのまにここの知り合いなんてできたんだろう。

インターホン越しに、『はい』と男性の声がする。

「日澤です」

『あぁ、!優介くん、今開けるねー』

エレベーターで9階が近づいてくるほど、変な緊張に包まれる。

優介がインターホンを鳴らし、いよいよその扉が開く。

中から出てきたのは、先程の声色から想像していた通りの、

優しい雰囲気を纏った若い男の人であった。