男の子は彼女の手をぎゅっと握りしめ、離そうとしなかった。

「そういえばお前、いくつだ?」

「8歳。小学2年生」

「バカだなー、小学2年にもなって迷子になってやんの」

「うっ、うるさい!」

「だはは、怒った、怒った!」

男の子が彼女の手を離し、僕を追いかけてくる。

彼女はそれを見て笑っていた。

僕に見せた、久々の笑顔だった。

少し遠くまで2人で追いかけっこをした辺りで、

僕は男の子に目線を合わせるために屈む。。

「あんな、10年の仲の俺ですら瑠夏と手なんか繋いだこと無かったんだからな。」