小さく溜息を零し、スマホをポケットにしまおうとした時だった。

そこらじゅう、ピンク色に染まった吹雪に紛れ座っている彼女の姿が、目に飛び込んできた。

遠くからでも、その綺麗な髪を持っていることは、すぐにわかった。

彼女の目からは、透明な水が、ぽろぽろと零れていた。

この希望の笑顔に満ち溢れた、

汚いピンク色の世界の中で、たった1人、

彼女だけが、泣いていた。


僕の心臓が、ドクドクと鼓動を増しているのがわかる。

彼女から目が話せず、周りの音は何も聞こえなくなり、

僕の視界には桜に舞られる彼女だけが映っていた。


ふと下を見れば、彼女の足元が赤く染っているのに気がついた。

鞄から取り出した、自分の足にも使った絆創膏を握りしめて

何も考えずに彼女に声をかけた。


「足痛いの?」

握りしめていた絆創膏を差し出す。

彼女はとても驚いた表情を見せたが、すぐに涙を拭い、

桜に良くお似合いの笑顔を咲かせた。

さっきよりも、より一層、鼓動は増す。

初めての経験で、僕はすぐに言葉が零れたのだ。


「好きです」


二言目で告白してしまうほど、

僕の心は彼女に奪い尽くされてしまった。