❁⃘


(本格的な失恋だな…)


人生で1度も彼女を作ったことは無い。

本気になれる人がいなかった。

だから、あんなに胸を鳴らす人がいるのだと、

彼女に出会った時は心底驚いた。


僕のスマホが音を鳴らし、画面を見る。

今日から高校生だと言うのに、憂鬱で仕方なかった。

『話がしたいから私の家に来て』

中学の頃、その歳にしてずっとひたすら遊びまくっていた僕には、

多くの面倒くさいツケが回ってきていた。

みんな僕を思って、自分だけを好きになって欲しいと、

私はこんなに好きなのに、とひたすら泣かれるのが面倒だった。

…身ごもってすぐに浮気された姉も、毎日こうして泣いていた。

大嫌いだった。恋愛をするとか、本気で好きとか、

あなたしかいないとか、大体そういう事をほざくやつらは、

1週間後には別の男にのめり込んでいた。

姉とは違って。

姉だけが、ずっと、何年も、酷いことをされた元彼を思い続けていた。

(そこまで辛いのになんで恋愛なんてするんだろう)